執行猶予



執行猶予についてご質問が多いのでまとめて説明します。


執行猶予制度?

執行猶予とは、本来は有罪なのに、刑罰を科さず、釈放する制度ですが、そもそも、一体なぜそのような制度があるのでしょうか。

理由の第一は、刑罰を科すことは本人や社会にとってマイナスの側面が多くありますから、刑罰は最後の手段であって、できるだけ科さないにこしたことはない、ということにあります。

第二に、犯人に、再犯すれば以前の刑が復活するというプレッシャーを与えて、再犯を防ぐという効果も期待されています。


執行猶予判決の条件

執行猶予判決をもらうには、法律上の条件があります

今回の刑が執行猶予付きになる条件は、A.【今回が初めての執行猶予判決にあたる場合(以前執行猶予判決を貰ったが、既に猶予期間を満了している場合は、この「初めて」扱いです。)】と、B.【以前の別件で既に執行猶予判決を抱えていて、未だ猶予期間を満了していない場合(俗に言う『弁当持ち』の場合)】とで、異なります。

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★A.【今回が初めての執行猶予判決にあたる場合

 下記三つの条件を満たすことが必要です。

条件1

 「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない」

 または

 「禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、刑の執行を終えてから5年経過している」

 のいずれかの条件を満たす。

 ※以前執行猶予判決を貰ったが、既に猶予期間が満了しているときは、他に実刑になった刑がない限り、条件1は満たします。

条件2

 今回の判決が、3年以下の懲役、禁錮、50万円以下の罰金である。

条件3

 情状が良い。(情状は、犯罪の内容が軽微か、動機に同情の余地があるか、被害を弁償しているか、反省しているか、など総合して裁判官が判断します。 )

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★B.【別件で既に執行猶予判決を抱えていて、未だ猶予期間を満了していない場合】(俗に言う『弁当持ち』の『ダブル執行猶予』)

 下記三つの条件を満たすことが必要です。

条件1

 今回の判決が、1年以下の懲役、禁錮である。

条件2

 今回の犯罪が、保護観察期間中の犯罪でないこと。

条件3

 情状が特に良いこと。


上記は、今回の判決の刑が執行猶予になるかどうかの話でした。

次に、これとは別の話として、一度執行猶予判決が出た後の話があります。

執行猶予の取消です。

執行猶予の取消とは、執行猶予になっていた刑が復活することです。

執行猶予が取消されると、執行猶予になっていた刑と、今回の新しい刑を合わせて、二つ合算で服役することになります。


執行猶予の取消

 下記のいずれかの条件で、執行猶予が取消されます。

必ず取消

 執行猶予期間中に、さらに罪を犯し、今回が禁錮以上の実刑になった。(ダブル執行猶予にならなかった。)

必ず取消

 執行猶予になった判決より前に犯した犯罪が発覚し、禁錮以上の実刑になった。

裁判所の裁量で取消

 執行猶予期間中に、さらに罪を犯し、今回が罰金刑になった。

 ★★★弁当持ちの方は、道交法違反に注意して下さい。交通違反を軽く考えていると、罰金になって、執行猶予取消がありえますから、大変残念なことになります。


※執行猶予の話は、多少細かいですし、なかなかわかりずらいところです。正確には、もう少し細かい話や例外的な話があるのですが、通常あまり関係がないので、ここでは一部省略し、敢えてわかりやすく書いています。不明点は弁護士にご相談を。

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