長野刑務所
元受刑者の方より



 次に、これまでの級に変わって登場した受刑者に対する新たな優遇区分および制限区分についてお話しします。新法では、受刑者の更生について、「その意欲を喚起するため、その自発性及び自律性を涵養するため」などとして、種々の制限緩和措置や優遇措置を講じています。制限緩和に関する分類は4〜1種、優遇に関する分類は5〜1類に分類され、それぞれ数字が小さくなるにしたがって制限が緩和され、又は優遇措置が施されます。

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 制限区分について説明しますと、4又は3種については、ほぼ同様で、刑務所の定める一番厳しい内容です。本投稿は、上位に指定された受刑者が受ける緩和措置を説明することが意味を持つので、詳細はこれまでの書籍に譲ることにします。ちなみに概略としては、2週間の新入教育期間を終了した者は、よほど反抗的な態度をとる様な事でもない限り、全員が3種に指定されます。

 それでは、更なる上位に指定されるにはどうすればいいのでしょうか?2種については、仮釈放の為の更生保護委員の面接さえ終了すれば誰でも指定を受けることができます。逆に言うと仮釈放目前でなければ2種にはなれないのです。ちなみに2種に指定された受刑者の受けることの出来る緩和措置は、検身(工場から居室に戻る際に下着姿になり、刑務官の前で定められた動きをして不正に物品などの持ち出しがないかチェックを受けること)の省略の許可。外部通勤作業の許可。事故契約作業の許可。外部との電話通信の許可などですが、全ては「許可することが出来る」ということであって、実際は釈放の2週間前になって検身の省略と電話通信が認められるだけで、新たに新法で認められた電話通信を除いては、実質は旧法下と変わらない処遇がなされているのだから、何ら変わっていないと言えます。検身については、これまで受刑者は刑務官の前で全裸になって手をヒラヒラさせ、片足を交互に上げながら自己の称呼番号を叫ぶ、俗にいうカンカン踊りという動きをさせられていたようですが、現在は下着着用のまま簡単な動きをするだけです。但しこれは新法の施行に伴なって変更になったものではなく、そのかなり前から変わっていたものの様です。

 それでは1種についてはどうでしょうか?これは、今年の7月に1名指定を受けました。1種の制限区分指定を受けた者は検身の省略。外部通勤作業の原則許可。自己契約作業の原則許可。準開放的施設における処遇(外冊や施錠のない施設における処遇)。などと規定されていますが、長野刑務所では、施設の特徴上そのような処遇は不可能ですから、1種に指定された受刑者は、他施設に移送となりました。

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 結局、規定はあるものの、上位の種に指定をしないという運用法をとることにより旧法下とほぼ同様の処遇となっているのが現状です。今年1種に指定された者がいたという事実はありますか、1200名収用の施設で1名というのは、受刑者にとっては「あなたは1種にはなれませんよ」と通告されたに等しいのです。恐らくこの指定(1名が2種に指定)は、刑務所の矯正局に対するジェスチャーなのだろうと推測出来ます。

 このように制限区分については、受刑者の95パーセントが3種の指定を受けている上に2種の指定を受けるのは釈放直前なのですから、事実上新法の方向性を決めた行刑改革委員会(名古屋刑務所で発生した刑務官による致死傷事件を受けて設置された法相の諮問機関)の意向は反映されているとは言い難いと言えるでしょう。これで、外出、外泊は運用上殆ど実施されないという事がおわかりいただけると思います。新法には「一定の割合で1種や2種に指定しなければならない」とは書かれていないのですから。

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