日本の刑務所の最大の特徴は、高齢の受刑者が多いことです(高齢受刑者の割合は2004年で11%)。
高齢受刑者の罪名で多いのは窃盗で、そのほとんどは無銭飲食や万引きなどの軽微なものです。中には殺人や交通違反で受刑する人もいます。そして、60歳以上の受刑者のうち、約半数の受刑者に過去に6回以上刑務所に入った経歴があります。
一体なぜ、高齢受刑者がこれほどまでに多く、また再犯者も多いのでしょうか。
この原因には、前科のある高齢者にとって、社会復帰が難しいことがあります。
日本の社会は、職もない、年金もない、あるのは前科だけ、そんな高齢者にとって、非情で厳しいものです。
社会で困難な生活を送るよりも、食事が出て、畳と布団の上で眠れ、薬も貰え、話相手がいて、介護まで受けられる、刑務所での暮らしの方いいと思う高齢者が多くいます。
そんな高齢者が、わざと小額の万引きや無銭飲食をして、刑務所の入ることを選ぶ現実があります。つまりは、刑務所に6回も行って社会で生活ができない高齢者の犯行の動機は、「刑務所に戻りたい」ということなのです。
本来、こうしたことは社会福祉の問題なのですが、日本の福祉にはいくつか制度的な欠陥があって、その不備を刑務所が担わされています。
これから将来、財政難による社会福祉のさらなる削減で、刑務所はさらに老人ホーム化していくでしょう。
すでに、尾道・豊橋・西条には、高齢受刑者専門の刑務所があります。これはバリアフリーで車椅子で受刑でき、介護も受けられる、まさしく老人ホームのような刑務所です。
80歳を過ぎた老人が、年金がなく、生活のために万引きをしなければならない。生きていかれないので刑務所に入りたいと願う。年老いてボケた妻を介護しきれず殺す。これは今そこにある日本の暗い一面です。