監獄から刑事施設へ



刑務所のことを、昔は監獄と呼んでいました。監獄の「獄」の字は地獄の「獄」です。ここに、日本で刑務所に課せられてきた社会的な役割が、はっきりと表われています。

なぜ刑務所は地獄だったのでしょうか。あるいはなぜ刑務所は地獄であることを求められたのでしょうか。

思うに、それはおそらくこういう発想だったのかもしれません。

犯罪者は犯罪を計画する時に、発覚して刑務所に行くリスクを考える。刑務所が地獄であればあるほど、犯罪者は刑務所には行きたくないから、犯罪を思いとどまる。刑務所は地獄であるべきだ。

犯罪者が刑務所に行って、地獄の生活を送れば、それがトラウマになる。犯罪者はもう刑務所には戻りたくないと考え、出所しても犯罪を繰り返さない。刑務所は地獄であるべきだ。

あとは時代的な話もあったのでしょうね。

一見わかりやすい考えです。今でも、一般には、刑務所は上記のようにあるべきだと思っている人が、実は結構多いのではないでしょうか。

ところがです、21世紀の現在では、上記のような発想の間違いが既に明らかになっています。

刑務所が地獄だから犯罪が減るなんてこともないし、再犯が減るなんてこともない、時としてむしろ逆効果だということが、統計や、世界の経験・研究から明らかになりました

今では、先進的とはいえない日本の行政すらも、刑務所の目的は、地獄でなくて、社会復帰であると、法律を作る時代です。刑務所は「監獄」とは呼ばず、これからはもっと普通の言葉、「刑事施設」と呼ぼうということになりました。

ここで難しいのは、一般の感覚というものです。一般には、おそらくまだ上記の紫の字の感覚が強い。しかし専門家にとっては、それが間違いだということは既に判明している。ここで一般人と専門家との意見に乖離が生じてしまうのです。

刑務所の話から話がそれていくので控えますが、そんなこんなで、刑務所の呼び方一つとっても、実はいろんな経緯があったりするものなのです。



刑務所生活